今回は「哺乳動物である人間が、実は体の半分は植物で構成されている」という話をしたいと思います。
ビックバンにより広大な宇宙が誕生し、その後宇宙の中に地球ができ、やがて地球上に生命が宿りました。
地球上には最初、目に見えないほど小さな微生物しか存在していませんでした。それが徐々に進化していき、人間という高等生物が誕生したのです。
では、目に見えないほど小さい微生物から、どのようにして人間が誕生したのでしょうか。
今回の記事では、その一連の流れと、人間の体の半分は植物でできているという話をします。
1. 地球の誕生時の生物
地球は、ビッグバンによる宇宙の中の破片や塵がそれぞれの重力によって引き合わされ、集合することで形成されました。
そして、誕生後の地球は隕石と落雷、超高温ガスなどにさらされていたため、当然生物なんてものは存在していませんでした。
しばらくした後に、地球上には高温ガスの影響による水蒸気の大気層が生じました。
その水蒸気の大気層の存在により、地球上へ降り注ぐ太陽光は遮られ、地球上の気温が急激に低下しました。
そして気温の低下と同時に水蒸気の大気層も冷やされ、雨として地上に降り注ぎ、大きな水たまりが生じました。
これが地球で最初の「水」と「海」の誕生です。この時の地球上の大気成分は主に以下でした。
■二酸化炭素
■メタン
■一酸化炭素
■水素
■アンモニア
つまり地球誕生時は、地球上に酸素はほとんど存在しませんでした。ただ、この頃から地球上では頻繁に化学反応が起きるようになりました。
「メタン」が「アンモニア」と反応することで「窒素」が発生し、この「窒素」が「二酸化炭素」や「メタンなどの炭化水素」と反応することで「アミノ酸」が生じました。
「アミノ酸」はさらにアミノ酸同士で反応を起こし、アミノ酸の配列である「タンパク質」を形成しました。
この「タンパク質」の存在が、地球上に生命が誕生できた最も大きな要因となります。
このタンパク質からはさらに、「原形質」という生命の細胞に必須な物質が作られ、その後連鎖的に細胞に必要な物質が生産されていきました。
そして、初めて地球上に「生命」が誕生しました。地球上で最初の生命は「古細菌」と呼ばれる微生物でした。
古細菌は「メタン」などの気体を代謝してエネルギーを獲得し、生きることができる微生物です。
つまり、地球の最初の環境に適応するように作られた最初の生物と言えます。
また、古細菌は「嫌気呼吸細菌」とも呼ばれています。嫌気呼吸細菌とは、「酸素」を必要とせずに生きることができる、むしろ酸素が存在すると死んでしまう細菌のことです。
つまり、古細菌とっては、初期の地球の大気環境は非常に生きやすかったと言えます。この後しばらくすると、古細菌以外に新しい生命が誕生しました。
2. 植物細胞の誕生
古細菌以外の新しい生命の正体は「光合成細菌」という微生物です。この微生物は、名前の通り光合成してエネルギーを獲得できる微生物です。
この細菌が誕生する頃、地球上には水蒸気の大気層はほとんどありませんでした。そのため、地球上に太陽光が降り注いでいました。
つまりこの細菌は、「太陽光」という環境に適応するために誕生した生物と言えます。
光合成は、光のエネルギーを利用して「水」と「二酸化炭素」から「炭水化物」と「酸素」を生産する反応です。
そのため、地球上の酸素はこの光合成細菌の存在によって初めて増えたのです。
そして、地球上に最初に酸素を大量に生み出したこの光合成細菌は「シアノバクテリア」と呼ばれています。
しかし、光合成細菌は光合成をして酸素を発生させることはできますが、元は古細菌が進化をして光合成ができるようになった細菌なので、古細菌と同様に酸素に弱いのです。
そのため、大気中に酸素が増えてからは、酸素に強い(酸素で呼吸ができる)光合成細菌が誕生しました。
その後さらに、酸素で呼吸をしてエネルギーを獲得できるならもう光合成機能はいらない、と光合成機能を捨てた光合成細菌が出てきました。
これが「好気性細菌」と呼ばれる細菌であり、私たちの祖先です。
この細菌はもとは光合成細菌でしたが、私たちと同様に「酸素」を活用してエネルギーを得ることができます。
3. 植物細胞と動物細胞の誕生
このように、地球上の環境の変化に伴い、最初に存在していた古細菌が様々な形に進化していき、「光合成細菌」や「好気性細菌」が生まれました。
しかし、この段階ではまだ地球上には微生物である細菌しか存在していません。
ここから、どのようにして植物細胞や動物細胞のような「真核生物(高等生物)」が生まれたのでしょうか。
実は、この進化は非常に単純です。地球誕生初期に存在していた、嫌気性細菌である古細菌の中に、別の細菌が入り込むことで、植物細胞と動物細胞ができたのです。
このように、ある細胞の中に別の細胞が入り込んで生きることを「細胞内共生」と言います。
≪植物細胞≫
古細菌の中に、シアノバクテリアが入り込むことで、古細菌が光合成機能を獲得。
この合体によって生じた細胞は「古細菌由来の細胞膜」と「シアノバクテリア由来の細胞膜」を獲得する。
これが植物細胞である。植物の光合成に必要な「葉緑体」はシアノバクテリア由来の機能。
≪動物細胞≫
古細菌の中に、好気性細菌が入り込むことで、古細菌が酸素呼吸機能を獲得。
この合体によって生じた細胞は、「古細菌由来の細胞膜」と「好気性細菌由来の細胞膜」を獲得する。これが動物細胞である。
動物の酸素呼吸に必要な「ミトコンドリア」は好気性細菌由来の機能。
以上が植物細胞と動物細胞の誕生の仕方です。葉緑体とミトコンドリアは、機能がそれぞれ「光合成」と「酸素呼吸」で異なりますが、システムはかなり類似しています。
それは、ミトコンドリアの酸素呼吸機能は、元は光合成細菌の進化体である好気性細菌由来のものだからです。
つまり、動物細胞は元をたどれば、「光合成細菌由来」の細胞とも言えるのです。そして、植物細胞が植物足り得るのは、「光合成細菌」が古細菌内に存在するからです。
つまり、光合成細菌の進化体である好気性細菌を持っている動物細胞も、元は植物であると言えます。
また、動物細胞は半分は古細菌のもの、半分は好気性細菌のものです そのため、体内に動物細胞を持つ人間も、半分は植物由来であると言えます。
このように、生物の進化には順序が存在します。この生物の進化系統のマップのことを”系統樹”と言います。今回は、人間の起源をたどった系統樹に着目した話でした。
以下は”Newton”という科学雑誌です。この雑誌は一般の方向けにかなり分かりやすく、図解もしながら科学を解説してくれている雑誌です。
私も小学生の頃、この雑誌を読んでは科学への興味を膨らませていました。
科学というと大人向けで難しいイメージがありますが、この雑誌は大人だけでなく、子供も楽しめるような雑誌となっています。
私が読んで特に興味深かった2冊を今回紹介します。1冊目は「人間の誕生の仕方」です。
いま最もホットな話題である「ES細胞(胚性幹細胞)」や「iPS細胞」などのような、再生医療についての原理と知見を、図解とともに楽しみながら深めることができます。
2冊目は、おそらく人類皆が興味があるであろう、宇宙についてです。
半年ほど前に話題になった”ブラックホール”の仕組みや誕生の仕方、タイムトラベルが可能かもしれない”ワームホール”についての原理なども記載されており、かなり楽しめる雑誌です。