遺伝子組み換えの可能性と不老不死の関係とは?テロメアとテロメラーゼ

 

今回は「遺伝子組み換えの可能性と不老不死の関係にテロメアとテロメラーゼというものが関与している話」を紹介したいと思います。

 

最近よく「遺伝子組み換え」という言葉を聞きますよね。

 

昔は作物の品種改良などで「遺伝子組み換え」という言葉をよく聞きましたが、最近は人間をテーマにした遺伝子組み換えの話が流行っているようです。

 

ドラマなどでも人体の機能向上目的で遺伝子を組み換えるという、若干SF感のあるテーマを取り上げるものも増えてきました。

 

しかし、人体における遺伝子組み換えの話題は今に始まったことではありません。実はかなり昔から、注目度の大きいテーマでもありました。

 

1. 遺伝子組み換えの歴史

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                       大腸菌

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                                           黄色ブドウ球菌

 

最初の遺伝子組み換えは1973年に行なわれました。この時は作物の遺伝子組み換えでは なく、微生物での遺伝子組み換えでした。

 

皆さんの大腸に存在する「大腸菌(Escherichia coli)」の遺伝子に、病院内感染で問題視されている「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換えです。

 

その後研究に研究を重ね、1994年に遺伝子組み換えがなされたトマト”フレーバー・セーバー・トマト”が完成しました。

 

このトマトは、通常のトマトよりも日持ちが良いトマトとなっており、輸出などの際に、新鮮なまま提供できるというメリットがあります。

 

では、なぜ遺伝子を組み換えると日持ちがよくなるのでしょうか。

 

その説明のためには、まずゲノムDNAと遺伝子とタンパク質の関係性を知る必要があります。

 

2. ゲノムDNAとは

DNAは、「A(アデニン)・G(グアニン)・C(シトシン)・T(チミン)」という4つの化学物質の配列で形成されています。例えば、以下のように。

 

5′-ATGGCTTAGAATCAGGTACGACTTAGCGATAGTGAACGTTAGCTTAGAGGCGTA-3′

 

英語で例えると、「I have a pen.」という文章の、文全体そのものがゲノムDNAに該当します。

 

このように、4つの化学物質の組み合わせ分だけゲノムDNAの種類があるため、ゲノムDNAの種類はほぼ無限に存在します。これが、人間一人ひとりが皆違う理由ですね。

 

この全長のDNAのことをゲノムDNAと呼びます(実際は、DNAは二重らせん構造をしているので、逆鎖と呼ばれるDNA配列が以下のように対を成しています。)

 

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3. 遺伝子とは

一部のDNA配列のことであり、この配列(遺伝子)は何かしらの機能を持っています。

 

以下は先ほどのゲノムDNAの配列の例になるのですが、このゲノムDNAの中の一部のDNA配列が遺伝子です。以下では遺伝子部を赤色で示しています。

 

5′-ATGGCTTAGAATCAGGTACGACTTAGCGATAGTGAACGTTAGCTTAGAGGCGTA-3′

 

このように、遺伝子はゲノムDNA内に存在している、機能を持った意味のあるDNA配列を表しています。

 

また、A、G、C、Tのそれぞれ1文字のことを「塩基」と呼び、b(ベース)あるいはbp(ベースペア)で表されます。

 

※実際の遺伝子は最低でも数百bあるため、上記のような短い遺伝子は存在しません

 

遺伝子は、英語で例えると、「I have a pen.」という全体の文章のうちの「pen」などのような「単語」を表しています。

 

4. タンパク質とは

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タンパク質は、アミノ酸で形成されています。1本のアミノ酸の配列がタンパク質です。タンパク質は、先ほど紹介した「遺伝子」をもとに作られます。

 

遺伝子の塩基配列を読み込み、それに対応するアミノ酸を「リボソーム」と呼ばれる装置が持ってきてタンパク質を作ります。

 

人間の体内で用いられるアミノ酸は標準アミノ酸と呼ばれ、20種類存在します。

 

例えば、ATGという塩基配列には、メチオニンというアミノ酸が対応しているため、遺伝子中のATGという塩基配列を認識して、リボソームがメチオニンを持ってきます。

 

英語で例えると、タンパク質は「I have a pen.」の「pen」という単語の「意味」を表しています。

 

例)123=a、456=b、789=c、135=d、246=e、357=fと置きます。

 

今以下のような全体配列があるとします。数字が塩基、アルファベットがアミノ酸であると仮定します。

 

123456789123135246111357456123246135666357456789246357990

 

すると、この数字全体の配列がゲノムDNAです。このうち、赤文字を遺伝子であるとします。

 

123456789123135246111357456123246135666357456789246357990

 

左から順に遺伝子a、遺伝子b、遺伝子cとします。では、タンパク質はどのようになるでしょうか。

 

遺伝子aのアミノ酸配列は「abcade」となり、これがタンパク質aです。

 

遺伝子bのアミノ酸配列は「fbaed」となり、これがタンパク質bです。

 

遺伝子cのアミノ酸配列は「fbcef」となり、これがタンパク質cです。

 

このように、遺伝子の塩基配列によってアミノ酸の配列が決まり、タンパク質が形成されます。

 

そのため、遺伝子の塩基配列が変われば、アミノ酸配列も変わり、形成されるタンパク質も変わるのです。

 

最初に「遺伝子は機能を持っている」と書きましたが、遺伝子自体は機能を持ちません。機能を持っているのはタンパク質です。

 

遺伝子は「機能を持っているタンパク質」を形成するための「特定の文字列コード」でしかありません。そのため、実際に機能を持つのはタンパク質です。

 

これが、遺伝子組み換えの基礎です。

 

つまり遺伝子組み換えの目的は、元の遺伝子のDNAの配列を変えることで、形成されるタンパク質を変え、機能を変えることと言えます。

 

タンパク質には機能ごとの種類があり、構造タンパク質・輸送タンパク質・調節タンパク質・酵素タンパク質などが挙げられます。先ほどの例で取り上げた品種改良作物「フレーバー・セーバー・トマト」は、酵素タンパク質の機能を変化させた遺伝子組み換えです。

 

5. タンパク質の機能を変える方法

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一言で遺伝子組み換えと言っても、遺伝子組み換えには様々な手法があります。

 

遺伝子欠損による機能完全喪失…①

これは、機能をなくしたいと考えているターゲット遺伝子の塩基配列をそのまま削る方法であり、この方法を用いると、そもそもの目的の遺伝子自体が消え去るので、タンパク質が形成さえされません。

 

形成されるたんぱく質の量を増減させ、機能の強弱を決める方法…②

これは少し難しい方法です。1つの遺伝子からは1種類のタンパク質が形成されるのですが、1つしか作られないわけではありません。

 

同じタンパク質が何個も何個も作られます。そのため、数が多ければ多いだけ全体的に大きい機能を持ち、少なければ少ないほど機能は小さくなります(運動会の綱引きと同じです)。

 

実はこの、作られるタンパク質の量というのを思い通りに変えることができるのです。

 

詳しい説明はここではしませんが、プロモーターと呼ばれる、タンパク質を作る量を決めている配列があるのですが、「いっぱい作る命令ができるプロモーター」に変えたり、「少ない量を作るように命令できるプロモーター」に変えたりすることで、形成するタンパク質の量を調整できます。

 

遺伝子を別の遺伝子に入れ替えることで機能自体を変える方法…③

おそらくこれこそが遺伝子組み換えのイメージだと思います。冒頭で出てきた「大腸菌」と「黄色ブドウ球菌」の例もこれです。

 

別の種の生物の遺伝子を丸々コピーしてきて、目的の生物の遺伝子と入れ替える手法です。

 

これにより、コピーして持ってきた生物種の遺伝子から作られるタンパク質と全く同じものを、別の生物種内で作らせることができます。

 

つまり、本来持っているはずのない機能を、遺伝子組み換えを用いることで獲得できるというものです。

 

例えば、両津勘吉の強靭な肉体が「つよ~ゐタンパク質」というタンパク質の機能のおかげだったとします。

 

そのつよーゐタンパク質を作り出す遺伝子を「ty-i遺伝子」とすると、自分自身の「体の強さを決めている遺伝子」を削って、代わりにそのty-i遺伝子を挿れて上げれば、両津勘吉級の体の強さを手に入れることができます。

 

ここで先ほどのフレーバー・セーバー・トマトの例を考えてみましょう。このトマトは、熟すまでの時間が通常のトマトよりも多くかかるトマトです。

 

そのため、輸出等の際に、新鮮さを保ったままで送り出すことができるのです。熟すということは、皮が柔らかくなるということ。

 

この皮が柔らかくなる現象は、皮の成分である細胞壁というものを分解する酵素が、細胞壁を分解してしまうことが原因です。

 

つまり、この分解酵素を弱めることができれば、熟すまでの時間を遅らせることができるのです(②)。これを遺伝子組み換えにより実行したものが、フレーバー・セーバー・トマトです。

 

6. 遺伝子組み換えの可能性

このように、好きなように遺伝子を組み換え、好きな機能を得ることができるのが、遺伝子組み換えの強みです。さらに、遺伝子組み換えを用いれば、不老不死になることも原理的には可能です。

 

皆さんは「テロメア」を聞いたことがあるでしょうか。これはゲノムDNAの端に存在する塩基配列の領域のことであり、寿命を決めている領域となっています。

 

このテロメア領域は、時が経つにつれ徐々に短くなっていくのですが、これがある一定の短さに達すると、細胞が増殖できなくなり、そのうち腐っていき、寿命が尽きます。

 

実はこのテロメア領域を伸ばすことができる酵素タンパク質が存在します。それが「テロメラーゼ」という酵素であり、主にがん細胞や生殖細胞で多く存在します。

 

精細胞やがん細胞が無限に増殖できる理由は、このテロメラーゼのおかげでテロメアが短くなることがないからです。

 

このテロメラーゼの量を決めているのが、プロモーターという配列です。

 

なので、精細胞やがん細胞のテロメラーゼ遺伝子のプロモーター配列を、遺伝子組み換えによって通常の細胞にも組み込むことができれば、寿命が尽きることもなく、細胞が永遠に分裂して新しいものになるため、不老不死になることができます。

 

ただ、これは原理的な話です。実際に行なうと、うまく機能しなくなり、逆に悪化・がん化してしまうでしょう。

 

この、がん化を抑えるシステムを誰かが作ることができれば、全員が不老不死を体験することができます。

 

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