今回は「大学受験の数学で確率が得点源になる理由と確率が苦手でも克服できる方法」を東工大生が紹介します。
数学を勉強するにあたってまず最初に皆がつまづくのが確率です。
確率のダメなところと良いところは「様々な解法が存在すること」です。
解法が多いがゆえに皆戸惑うし、逆に理解できれば別解を考案して最短で解くこともできます。
つまり、確率という単元は弱点になりやすい一方で、最強の武器に変えやすい単元でもあるのです。
そこで今回は、私が確率を克服して得意単元にした方法について紹介しますので、是非参考にしてみてください。
マネー金
数学の確率が嫌われる理由と得点源になる理由
皆が確率に苦手意識を持つ原因は以下3つです。
- 公式のパターンが少なく、思考による解答が求められるから
- 解法が多く存在しており、戸惑ってしまうから
- 場合分けが多く、手間がかかるから
それぞれの原因について具体的に見ていきましょう。
①が原因の場合
- 確率は公式やパターンが他の単元に比べて定まっておらず、より「思考」を求められる単元
確率では公式や解法パターンが他の単元に比べて統一されていません。
例えば微分やベクトルなどの分野は、使うべき公式が決まっており、問題のパターンもある程度のレベルまでは丸暗記で対応できます。
しかし確率の場合、公式やパターンが他の単元に比べると定まっておらず、より「思考」を求められる単元となっています。
しかも慣れていないうちはその「思考」が難しく、その段階で確率に苦手意識を持ってしまう方が多いです。
②が原因の場合
- 解法が複数存在する上に、解法を選び間違えると複雑さが増すので嫌われやすい
確率は一つの問題に対して複数の解法が存在します。
数え上げる方法もあれば、スタイリッシュに式で解いていくやり方もあるし、逆転の発想を用いる解法も存在します。
そして厄介なのが、『解法を選び間違えると解き終わるまでに相当な複雑さと時間を要することがある』ということです。
【例】
白玉3個と赤玉4個が入った袋の中から玉を2個取り出した時、白玉が少なくとも1個含まれている確率を求めなさい。
真正面から「白玉が1個の時の確率と白玉が2個の時の確率を足す」という方法をとると、時間がかかります。
余事象を利用して「白玉が1個も含まれない確率を全体から引く」という方法を用いた場合、時間短縮ができます。
この問題の場合はそれほどどちらの解法にも時間的差がないのですが、難易度が上がってくると大きな差が生じてきたりします。
また、今回は余事象を用いた時の方が時間短縮ができましたが、逆に余事象を用いた方が複雑化して時間がかかってしまうケースもあります。
このように、確率は解法が複数存在する上に、解法を選び間違えると複雑になることがあるので、毛嫌いしてしまう人が多いです。
③が原因の場合
- 場合分けの多さと複雑さに嫌気がさしてしまう人が多い
確率は場合分けが複雑な問題が多いです。
画期的な別解を思いつけば簡略化することが可能ですが、思いつかない場合は地道に場合分けをするしかありません。
その時に、場合分けの多さと複雑さで嫌気がさしてしまって、根折れしてしまう人が多いです。
場合分けが多い問題ほど鬱陶しい問題はないですからね。
大学受験数学の確率で必要な知識はたった2つ
確率はややこしい複雑な単元のように思えますが、実は確率で必要な知識は以下2つしかありません。
- 「Pは順列」で「Cは組み合わせ」
- 「独立」と「排反」の計算の仕方
誰でも一度は聞いたことがあると思います。
1.Pは順列でCは組み合わせ
P
- 選び方を気にする
- 並び方を気にする
C
- 選び方だけ気にする
例えば以下のような問いがあったとします。
【問1】
A~Gさんが部屋の中で待機しているとします。
秋元や〇し監督はその中から3人を選んでダンスユニットを作ろうとしました。
しかしダンスユニットなので、ただ3人を選ぶだけではなく、それぞれのダンスの立ち位置も決めなければなりません。
そこで監督は、A~Gさんの中から3人を選んで、かつそれぞれのダンスの立ち位置も決めようとしました。
その時出来上がるダンスユニットの立ち位置のパターンは何パターンあるでしょうか。
【問1の解答と解説】
まずA~Gさんの7人のうちから3人を選び(1.選び方を気にする)、その上でその3人のダンスの立ち位置を決めないといけない(2.並び方を気にする)ので、7P3になります。
【問2】
もし監督が急に、とりあえずダンスユニットのメンバーだけ決めたいから立ち位置は誰がどこにいてもいいや、と言ったらどうでしょう。
先ほどせっかく選び方と並び方の通り数を決めたのに、初めからやり直しになりそうです。
しかしせっかく決めたのに初めからやり直しは腹が立ちますよね。
そこで、先ほど出した「1.選び方」「2.並び方の通り数」である7P3を利用しましょう。
【問2の解答と解説】
今回、監督の命令で「2.並び方の通り数」は決めなくていいとのことだったので、2だけを消してあげればいいのです。
では、どうやって2だけを消しましょう。
2だけをリセットする方法は 7P3 / 3! で求めることができます。
つまり、「並びの通り数」で割ればいいのです。
3人のダンスユニットの選び方が35通りで、その3人の立ち位置の通り数が6通りだった場合、3人のメンバーを選んで立ち位置を決める通り数は35×6であり、これが7P3です。
この35×6(7P3)を、立ち位置の通り数である6通りで割ってあげれば、3人のダンスユニットの選び方だけになりますよね。
この立ち位置の通り数である6通りが3!です。
つまり、ダンスユニットだけの選び方は35通り(7P3/3!)になります。
そして、この 7P3 / 3! は 7C3 と表すこともできます。
このように、PとCはお互いをお互いで表すことができます。
この変換は公式として暗記するのではなく、今回のように概念として理解しておいてください。
ここまでが最低限理解できていれば、今からでも十分苦手から得意単元に変えられます。
2.独立と排反の計算の仕方
- 「独立」と「排反」は「掛け算」か「足し算」かの違い
排反
- それぞれの事象が『または』のイメージの時に足す
例えば、「サイコロ2個を投げてその和が6の倍数にある確率を求めなさい」と言われたらどうしますか。
おそらく「①サイコロの目の和が6になる時」と「②サイコロの目の和が12になる時」のそれぞれの確率を求め、最後にそれぞれの確率を足すと思います。
これは、「サイコロの目の和が6になる時」と「サイコロの目の和が12になる時」が互いに関係のない事象だから足すのです。
イメージとしては、6になる場合、または12になる場合、という「または」のイメージです。
独立
- それぞれの事象が『かつ』のイメージの時に掛ける
サイコロ2つを2回投げ、「1回目のサイコロの目の和が6で、2回目のサイコロの目の和が12になる確率を求めなさい」と言われたらどう答えますか。
おそらく「①サイコロの目の和が6になる確率」と「②サイコロの目の和が12になる確率」をかけると思います。
これは、1回目のサイコロの目の結果と2回目のサイコロの目の結果が関係しているからです。
お互いの事象の結果がそろって初めて算出されるもの、つまり関係のある事象だから掛け合わせるのです。
イメージとしては、6になる場合かつ12になる場合、という「かつ」のイメージです。
この「足し算」「掛け算」の区別がついていれば、確率を苦手から得意にする準備としてはOKです。
大学受験数学の確率を苦手から得意にする方法
【問題集1周目】
- PとCは概念をある程度イメージする
- 少し考えて分からなければすぐに答えを見る
- なぜその解法になるのか考える
- ※もし分からなければそのまま解法を暗記
【問題集2周目】
- 分からなくとも5分程考える
- それでも分からなければ答えを見る
- 解法を読んで理解する
- ※もし理解できなければ再び暗記
【問題集3周目】
- 解ける問題に関しては別解も考えてみる
- 解けない問題は解法を理解できるまで考える
- ※どうしても分からなければ一旦飛ばす
- ※質問できる人がいるのならこの時点で聞く
【これ以降】
- 同じ問題に〇が3つつくまで繰り返し、3つ〇がついた時点でその問題はOK
- ここまで繰り返してなお解答を読んで理解できない問題があるなら、原理から理解しなおす必要あり
確率は、「とりあえずこの問題はPでとりあえずこの問題はCを使えって習った」という感覚で演習していてもなかなか上達しません。
しかし、PとCの本質や独立と排反の違いを、ある程度でいいのでイメージしたうえで演習を重ねていけば、自然とできるようになってくる単元です。
確率が苦手で点数が悪い人というのは、なんとなくでPとCを使っている人あるいは、単純に演習量が足りていない人のどちらかです。
まずはPとCの概念と独立排反の概念をある程度でいいのでイメージして、その上で演習を繰り返していけば必ず苦手克服できます。
決してセンスなどは関係ないので、ここまでのことを意識しながらめげずに演習を続けてください。