今回は、「血液クレンジングの危険性について、専門的な視点から科学的に」分かりやすく説明します。
SNS上ではなんと、芸能人の方達もこの血液クレンジングを利用しているようです。利用目的は主に美容となっています。
しかし、この血液クレンジング、一歩間違えれば美容どころか、逆に体の機能すべてが悪化してしまう可能性が高いのです。
血液クレンジングは保険も認められているような正式な医療法なのですが、この治療法には明確な対象者がいます。
それは、重度のがん患者や何か血液関連の病気を患っている方です。
つまり、これ以上血液の状態の改善が見込めないほど悪化している方に向けた治療法なのです。
結論から言えば、血液クレンジングは重度のがん患者や何か血液関連の病気を患っている方以外、受けるべきではないです。
とはいっても、なぜ危険なのかを知らないと納得できませんよね。
そこで今回は、この「血液クレンジング」に着目して、科学的にオススメしない理由を説明します。
今回の記事はこんな方にオススメ
・血液クレンジングが気になっている
・血液クレンジングの効果を知りたい
・なぜ危険なのかの理由を知りたい
目次
1. 血液クレンジングとは
血液クレンジングは、オゾンを用いた治療法であり、名前の通り血液をフレッシュ化することで症状を改善する治療法です。
治療方法は、血液の一部を抜き取り、その血液にオゾンガスを充填することで血液をリフレッシュする、という治療法です。
このオゾンガス血液クレンジング法は最近出現した治療法というわけではなく、かなり昔から存在しています。
あのエリザベス女王の母親も美容目的で利用していたと言われるほどです。
このように、外国では割と前から血液クレンジングが美容目的でビジネス化されているのですが、日本ではまだあまり普及していません。
この理由はおそらく、過去に外国でこのオゾンガス血液クレンジング法で亡くなった方がいるからでしょう。
その時は、患者の肺にオゾンが混入し、肺機能が悪化して亡くなってしまいました。
肺の細胞はオゾンに抵抗性が少ないため、このような事故が起きてしまったのです。
このように、一見かなり危険な治療法に見えるオゾン血液クレンジング法ですが、実は重度の患者に対する治療としては一部認められています。
では、このオゾン血液クレンジング法にはどのような効果があるのでしょうか。
2. 血液クレンジングの効果
オゾン血液クレンジング法は、一般的に病気の患者に対して用いられる方法です。
その病気の例は以下です。
■ウイルス性疾患
■がん(悪性腫瘍)
■糖尿病
■細菌性感染症
■自己免疫疾患
■線維筋痛症
これらの病には、共通点があります。それは、どれも「血液の非正常性」です。
それぞれに対して、どのような血液の非正常性が原因であるかを以下にまとめます。
血液の非正常性
①【ウイルス性疾患、細菌性感染症】
血液中へのこれらの混入による血液汚染
②【がん(悪性腫瘍)、自己免疫疾患】
免疫システムの低下
③【糖尿病、線維筋痛症】
血中酸素量の低下
では、オゾン血液クレンジング法はこれらの病に対してどのような効果を発揮するのでしょうか。
オゾン血液クレンジング法の効果
①【ウイルス性疾患、細菌性感染症への効果】
ウイルス性の疾患や細菌性の感染症は、血液中にこれらが入ってしまっており、汚染された状態にあります。
オゾンには殺菌作用があるため、汚染された血液にオゾンを充填してあげることで、血液中のこれらの感染体を死滅させることができます。
②【がん(悪性腫瘍)、自己免疫疾患への効果】
がん(悪性腫瘍)に関しては、オゾンによる血液中の酸素濃度と免疫機能向上を目的として用いられています。
がん細胞は嫌気代謝(酸素を使用しない代謝)で増殖する細胞であるため、酸素が嫌いです。
血液にオゾンを充填してあげると、オゾンが酸素としてヘモグロビンのヘムと結合するので、血液中の酸素濃度が上がります。
次に免疫システムに関してですが、血液へのオゾンの充填の際に、酸素として結合しなかったオゾンは、活性酸素種へと変貌します。
活性酸素種は非常に酸化力が強く、細胞毒性を持っているため、細胞の老化やDNAの損傷の原因となります。
そのため、体の中にオゾンが大量に入ってしまうと、かなり危険です。
しかし、流入するオゾンの量が少なければ、免疫システム活性化に貢献します。
これはインフルエンザの予防接種で少量の病原性の低いワクチンを入れるのと似ています。
活性酸素種が発生すると、活性酸素種を抑制する働きを持つ「抗酸化物質」が体内で生産されます。
この抗酸化物質は、酵素の働きによって合成されます。活性酸素種が発生すると、その活性酸素種を抑制するために抗酸化物質が必要となります。
そのため、抗酸化物質を作る酵素は「やばいっ早く作らないと!」と急かされ、活性化されます。
この時に、活性酸素種の量が多いと、処理しきれずにパンクしてしまい、そのままの勢いで活性酸素種に毒されていきます。
しかし、活性酸素種が少量だと、発生した活性酸素種はすぐに抑制できます。
そして、少量の活性酸素種のおかげで、抗酸化物質を作る酵素は活性化されます。
その結果、体内の免疫システムも同時に活性化されます。
③【糖尿病、線維筋痛症への効果】
糖尿病や線維筋痛症の場合は、血中酸素濃度が低下しています。
酸素が各組織細胞に行き渡らなければ、筋肉などの組織も動かしづらくなるだけでなく、そもそもの代謝自体が回りづらくなります。
これはかなり危険な状態です。
オゾンを血液に充填すれば、先ほど上で説明したように、酸素としてヘムに結合するので、血中酸素濃度が上昇します。
血中酸素濃度が上昇すれば、各細胞への酸素運搬量も増えるため、好気性代謝(酸素を利用して動かす代謝)の回転も上昇します。
つまり、代謝促進にも貢献します。このように、オゾンの血液充填には効果的なものもあります。
しかし、これは今後改善の見通しがなく、どうしてもオゾン治療をしなければならない病気の方向けです。
正常な方がこのオゾン血液クレンジング法を用いると、メリットではなく、デメリットの方を被る可能性の方が高いのです。
3. オゾンの性質
オゾンは先ほど記載したように、殺菌性が高いため、医療現場では用いられているケースも少なくありません。
しかし一方で、人間の体内に入ると活性酸素種という形で細胞毒性を持つ物質でもあります。
人間の体内にはゲノムDNAが存在しています。そのDNAには「遺伝子」と呼ばれる領域があり、この遺伝子をもとに「タンパク質」が作られています。
ゲノムDNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4つの物質が並んで配列を作ることによって構成されています。以下をご覧ください。
このように、4つの物質が並んで構成されたゲノムDNAの中に、遺伝子が存在しています。
ゲノムDNAの中に遺伝子が存在しているので、もちろん遺伝子も4つの物質の配列です。この図でいうと
ゲノムDNA=青(遺伝子以外のDNA領域)+黄色(遺伝子のDNA領域)
と言えます。そして、それぞれの遺伝子には、それに対応したタンパク質が存在しています。
同じ「タンパク質」という物質でも、髪の毛と皮膚が異なっているのは、元となる遺伝子の配列(4つの文字の組み合わせ)が異なっているからなのです。
人が一人ひとり異なっているのもこれが理由です。
しかし、この人間の中に存在しているゲノムDNAは、ある条件で変化してしまいます。その条件は「反応を起こしてしまうこと」です。
今回のテーマの原因物質である「オゾン」は体内で活性酸素種になると言いましたね。活性酸素種はかなり強い酸化力を持っています。
そのため、活性酸素種はゲノムDNAの4つの物質を変化させてしまうのです。
この時に、もし遺伝子の領域のDNAが変化してしまうと、今までAというタンパク質を作っていたのが、作れなくなってしまいます。
作れなくなるだけならまだいいのですが、全く意図しない別のタンパク質を作ってしまうこともあるのです。
これが、がん化の始まりです。
つまり、もしオゾンの流入量が多く、体の中で抗酸化物質が対処できないほどの活性酸素種が発生すると、がん化する可能性もあるのです。
そして、もちろん活性酸素種が酸化するものはDNAだけではなく、細胞や代謝物質も酸化します。
つまり、代謝の低下や免疫系の低下にもつながり、アンチエイジングによる美容目的どころか、かえって老化してしまう可能性もあります。
これは、脱血した血液への最適量のオゾン充填ならば避けられるのですが、その適量は人それぞれでかなり異なります。
また、オゾンが酸素としてヘムに結合する結合割合と結合速度もあいまいです。
つまり、確実なエビデンスを持ったうえで、その最適量を充填しないと、ただの老化促進になる可能性があるのです。
4. 結論
結論としては、アンチエイジングや美容目的での利用はあまりオススメしません。
かなり料金もする上に、効果が得られないどころか、逆効果な可能性もあるからです。
それよりも、水をしっかりと摂取し、ヘムの酸素輸送量を上げる食事や行動をし、抗酸化物質を摂取した方がよっぽど安価で効果的です。
以下にアンチエイジングや美容を目的とした方向けのオススメの記事を貼っておきますので、もし興味があればご参考ください。
おそらくその辺のサイトでは得られない情報もたくさん載せています。
こちらの記事では血中酸素濃度を上げて代謝やターンオーバーを促進させるための原理と対策を詳細に載せています。
こちらの記事では、活性酸素種の効果的な抑制方法と、抗酸化力の強い食べ物等を詳細に載せています。
こちらの記事では、水の有用性、代謝促進機能、アンチエイジング効果などの原理と、オススメの水の摂取の仕方を詳細に載せています。
以上、今回は「血液クレンジング」についてでした。私自身はオススメはしませんが、どうしても興味がある方は、一度行ってみるのもいいかもしれません。
もしかしたら思わぬ収穫があるかもしれませんからね。