病院で薬として処方される抗生物質は人間にも影響があるの?

 

今回は「病院で薬として処方される抗生物質は人間にも影響があるのかどうか」について科学的に分かりやすく紹介したいと思います。

 

風邪をひいたり病気になったときに、たまに病院で抗生物質をもらうことがありますよね。

 

そして、処方された抗生物質を服用していると、効果が出てきて完治していきますよね。

 

この時、皆さんはこう思ったことはありませんか。

 

・抗生物質は細菌に効くけど、人間にも影響は出たりしないの?

 

・そもそも抗生物質はウイルスにも効くの?

 

実は私も、研究を始めるまでは抗生物質について何も知らず、なんかよくわからないけど風邪や病気が治る薬としか思っていませんでした。

 

しかし、抗生物質は実は結構奥が深いのです!

 

今回はその抗生物質の謎について紹介したいと思います。

 

抗生物質が人間にも効いてしまうのかどうかの話をする前に、抗生物質について少々触れましょう。

 

1. 抗生物質

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抗生物質とは

抗生物質は、細菌の成長を阻害し、最終的に死滅させる薬剤のことです。

 

有名なものとしては、ドラマの仁で流行った綾瀬はるかのセリフ「ペニシリンでございます!」があります。

 

先日の記事で「毒物」について書きましたが、実はこの抗生物質も毒物と同様の働きをします。つまり、抗生物質は見方によっては毒とも言えるんですね~。

 

(毒物の働きについて詳しく知りたい方は以下の記事を是非どうぞ!)

 

同じ毒物でも人間は死ぬのに他の生物が死なない理由とその原理

 

では、抗生物質はどのように働いて、細菌の成長を阻害するのでしょうか。

 

ここでは抗生物質の中でもっとも有名なペニシリンを例に挙げて説明します。

 

 抗生物質の働き

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上図は細菌の表面の構造(細胞表層構造)です。

 

細菌は単細胞生物であり、その小さな小さな1つの細胞は、主に「細胞膜」という油状の柔らかい膜と、「ペプチドグリカン層」という、堅めの厚い層で形成されています。

 

細胞膜は油状の柔らかい膜なので、不安定です。そのため、ペプチドグリカン層という、堅くて厚い層で身を覆っています。

 

つまり、細菌はこのペプチドグリカン層がなくなったり、全壊してしまったりすれば、破裂して死んでしまいます(浸透圧という力の影響で)。

 

実は、ペニシリンはこのペプチドグリカン層の形成を不可能にする(阻害する)物質なのです。

 

そのため、細菌はペニシリンにさらされると、ペプチドグリカン層の形成ができなくなり、そのまま死んでしまいます。

 

2. 細菌とウイルスの違い

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実は、見た目は同じように見える細菌(=微生物)とウイルス(≠微生物)は全く違います。さて、どう違うのでしょうか。

 

最も大きな違いは「自分の力で増殖できるかできないか」です。

 

細菌は、自分のゲノムDNAをもとに多種多様なタンパク質を作り、そのタンパク質をもとに色んな生体システムを形成し、展開しています。

 

そのため、自身で増殖をする機能も持っています。

 

一方、ウイルスは、自分だけでは増殖することができません。これには理由があります。

 

”ゲノムDNAをもとにタンパク質を作ること”が増殖できる条件なのですが、「ゲノムDNAからタンパク質を作る」ためには、ポリメラーゼという酵素が必要なのです。

 

細菌は、このポリメラーゼという酵素を持っているため、自分自身でゲノムDNAから多種多様なタンパク質を作ることができます。

 

しかし、ウイルスはこのポリメラーゼを持っていないため、自分だけでは多種多様なタンパク質を作ることができません。

 

ウイルスは、タンパク質の殻とゲノムDNAしか持っていないのです(安物のガチャポンみたいな感じ)。

 

ウイルスは自分で増殖できないと先ほど言いました。しかし、現実では、増殖したウイルスに苦しめられている人はたくさんいます。

 

では、ウイルスはどうやって増殖をしているのでしょうか。

 

先ほども書いた通り、ウイルスは自分では増殖できません。

 

なぜなら、ゲノムDNAから多種多様なタンパク質を作るために必要な「ポリメラーゼ酵素」を持っていないからです。このポリメラーゼ酵素は、ウイルス以外の生物は皆持っています。

 

そうです。

 

ウイルスは、他の生物に寄生して、その生物内のポリメラーゼ酵素を勝手に利用することで多種多様なタンパク質を作り、増殖を可能にしているのです。

 

この寄生時に変な物質を作り、寄生先の生物を苦しめるのです。嫌な奴ですね~。

 

では、この嫌なウイルスも先ほどのペニシリン抗生物質で倒せるのでしょうか。答えは否です。

 

なぜなら、「ペプチドグリカン層」は細菌しか持っていない構造だからです。そのため、ターゲットとなるのは細菌だけです。

 

3. 抗生物質は人間にも影響があるのか

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先ほどのペニシリンは、細菌しか持っていないペプチドグリカン層の形成を阻害する抗生物質でした。

 

しかし、抗生物質にはいろんな種類があります。

 

代謝系の途中の化学反応に必要な酵素を働けなくするものや、細菌が栄養を取り入れるのに必要な”口”を壊すものなど、様々な種類があります。

 

そのため、抗生物質を摂取すると、細菌だけではなく人間にも影響が出るのではないか、と思いますよね。しかし安心してください。

 

抗生物質は、”細菌にだけ存在し、人間には存在しない酵素やタンパク質、その他の物質”をターゲットとしています。

 

そのため、細菌にはダイレクトに影響が出るのに対し、人間には影響が出ません。

 

もし人間にも、細菌と同じあるいは構造が似ている物質が存在したら、抗生物質のターゲットになって影響が出るのでは?と思う方もいるでしょう。

 

確かにその通りです。細菌と同じあるいは構造が似ている物質を持っていて、なおかつその物質が抗生物質のターゲットとなっていれば、人間にも影響します。

 

しかし、抗生物質は「細菌を殺すため」の物質です。そのため、細菌以外には効果はありません。

 

実はこれにはちゃんとした理由があります。 それは、抗生物質を作る過程にあるのです。

 

4. 抗生物質の作り方!?

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抗生物質は2つ作り方があります。

 

1. 人間が、人間にメリットのあるように化学合成する方法

 

2. 細菌を利用して作り出させる方法

 

おそらく皆さん驚いているでしょう。実は抗生物質の多くは、細菌が作っているのです。訳が分かりませんよね。

 

細菌は、自分を殺すための薬を作り出しているのです。これはどういうことなのでしょう。

 

実は、抗生物質を作り出すのに特化した細菌がいます(放線菌という細菌)。

 

この細菌は、孤高の浮雲的存在の細菌なので、自分の近くに他の種類の細菌が存在するのを嫌います。

 

そのため、周りの邪魔な細菌を殺して自分を守るために、抗生物質を作ります。

 

ここで、抗生物質を作り出して周りの細菌を殺したのはいいけど、自分自身もその作り出して放出した抗生物質で死んでしまったら本末転倒なので、自分だけは死なないような機能をしっかり持っています。

 

そのため、自分で作り出して自分も死ぬという間抜けな結果にはなりません。

 

つまり、先ほどの「抗生物質が細菌だけに影響があるように作られている理由」の答えは、「細菌自身が、他の細菌を殺すことを目的に作っているから」となります。

 

5. まとめ

 

◆ 細菌は自分で増殖できるが、ウイルスは寄生先の生物の力を利用しないと増殖できない

 

◆ 抗生物質は細菌には効果的だが、人間には効かない(ウイルスにも)

 

◆ 抗生物質を作り出しているのは、実は細菌自身である

 

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